月曜日, 9月 18, 2006

芸術的な順行とプラモ

私は今までの人生のほとんどを科学の分野で過ごしてきたが、芸術的な道を辿るのは実はそれほど不思議なことではない。

子供のころから宿題をやるべき時間に絵を描いていたり、科学系っぽいことをしていない時は空想にふけったり落書きをしていたので、私のことを「マンガ家かなんかになるべきじゃないのか?」と考えていた人は少なくない。

しかし好きなのは絵を描くことだけではなかった。恐らく小さいころは工作してものを作ったりするほうに興味があったようだ。


これはまだ大学院にいるころ、ある冬の週末にやってみた工作である。昔中国の芸術家が二本の毛だけの筆で球の中に絵を描いたと聞いたので、自分でもやってみようと思った。題材としては石ノ森章太郎先生の不滅のクラシック、「サイボーグ009」の島村ジョーを選んだ。つまようじを使って、クリスマス飾りの留め金の穴からアニメ塗料を慎重に入れていった。滑らかな面に塗られた塗料をガラスの外から見ると、磨かれた石みたいに見える。

私はプラモ作りが大好きである。少年時代はよくプラモで遊んでいたが、そのころはまだどうしようもなく青く、筆に付いたラッカー塗料を水で洗い落とそうとしたり、エアーブラシに塗料を薄めないで入れたりしていた。(モデラー諸君はそれがどんなに無謀なことかはよく知っているだろう。)

とにかく、大学院の途中でまたプラモに興味が向き(読者諸君もここら辺で私の行動パターンが見えてきたと思う)、「Zガンダム」からのメカ「パラス・アテネ」をひとつスクラッチビルドしてみようと試みた。普通プラモっていうと、おもちゃ屋さんで買って、接着剤を使って細かい部品を組み立て、塗装するというものである。でもフルスクラッチの場合は全部品を自分で工作するので、ポリスチレンの板やポリエステルパテの塊などから彫刻しなければならない。部品の複製が必要な場合、シリコンゴムで型を取ったものにポリウレタンレジンを流し込んで作っていく。

どんな企画でもそうだが、締め切りがあると助かる。そのためにもこの作品はホビージャパン誌が主催する全日本「オラザク」選手権に投稿することにした。作りにくい部品があったり、間接をうまく作れなかったりで苛立ったことを覚えている。また締め切りに間に合わせるために徹夜一晩で塗り終えねばならなかった。でも最終的に出来は悪くなく、八百以上の競技者の中から三位として選ばれた。またホビージャパン誌のガンダム担当がとても気に入ってくれたので「ガンダムウェポンズ」に作例として掲載され、雑誌にライターとして活躍しないかと聞かれた。でもいい加減大学院を卒業しないといけない身分だったので、あまり関係ないことに時間をかけることはゆるされなかった。



本業もちの今では、プラモはそれほど値段が高いものではないので十分手が届く。でも逆に作る時間がないので、妻よりもクローゼット(押入れ)スペースを使うくらいのつんどくモデラーになってしまった。(彼女が怒ってることわかります?)えーっと、話にもどり…私はこのマンガキャリアを本格的に軌道に乗らせるためにも、当分ガンプラとはおさらばなのである。